錯覚とデッサン力

 視覚に関する錯覚は、錯視と呼ばれています。人間は、実は「目」を使って立体視しているわけではありません。物を奥行きのある立体だと判断するのは、「脳」の仕事。二次元に描かれた絵から、立体を表現しているものだと判断するのも、目ではなく脳の仕事なのです。脳が騙されてしまうと、実際にそう見えているはずがないのに認識としては、騙されてしまうことになります。ですから人間は錯覚するのです。そう考えると、二次元的な絵が立体に見えるというのは一種の錯覚ともいえます。
 例えば、文字では上手く伝えられないのですが、
 <ー>
 >ー<
 こんな風に、上と下の図形、真ん中のラインはどちらが長く見えますか?というような問題を見たことはないでしょうか。これは同じ長さの線であっても、上は短く、下は長く見えるという幾何学的錯視のひとつです。また、有名なAAをひとつ紹介します。

コロコロー (((●
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 どうでしょう。斜めに見えますよね。これも幾何学的錯視の一種です。人は色相や面積、陰影情報など、様々なものに惑わされて錯視を起こします。目に見えるままに紙に何かを映し出そうとするとき、そこに錯視がないのか、自分では判断出来ないことになります。といっても錯視は、通常誰にでも起こることですから不自然さは感じず、錯視があることに気付いて本当に見たままに描くほうが逆に不自然さを感じさせることもあります。正しく描いているつもりでも、なぜかしっくりこないデッサンになってしまった場合、そうした人間の生理的な感覚に反している事もあるのです。デッサン力を上げるためには必須ではありませんが、錯視はあって当たり前、計算や知識よりも自分の感覚を大事にしたほうがいいこともあるのです。

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